第5章 慣れてきた時こそ
『あっ、緑谷くんだ』
「ほんとだ〜!」
「麗日さんに言さん!」
駐車場に向かう途中でコスチューム姿ではなく体操服を着用している緑谷くんを見かけた。緑谷くんは私とお茶子ちゃんを見つけるとパッと顔を明るくして私たちに駆け寄ってくる。
「デクくんは体操服だ、コスチュームは?」
「戦闘訓練でボロボロになっちゃったから…修復をサポート会社がしてくれるらしくてねそれ待ちなんだ」
『確かに訓練でかなりボロボロになってたね』
そして私たちがバスに乗り込む寸前で飯田さんが何やら指示を出していた。
「バスの席順でスムーズにいくよう番号順に2列で並ぼう!!」
「飯田くんフルスロットル……!」
飯田さんはしっかりと学級委員長の名に恥じぬ仕事をしているようだ。そして彼の言われた通りに番号順でバスに乗ろうとしたのだが
「こういうタイプだった、くそう!!!」
バスの内部は3分の2が向かい合う形の座席で残りは2人席の座席という特殊なバスの構造だったので飯田さんの番号順に座るという提案はボツになってしまったのだ。飯田さんは悔しがりながら腰をがっくりと落とす。
ちなみに私は轟さんと2人席に座っている。バスが出発して時間が経つが互いに話をする気配は無く、私たち2人の間には沈黙が走る。戦闘訓練の時も思ったけど轟さんは無表情で何を考えているかが分からないからとても気まずい。
(やっぱりこの席、止めとけば良かったかな…)
でも轟さんの隣に座らなかったら爆豪さんと同じ席に座ることになっていただろうし、それはそれで自分の身の危険を感じる…。私も反対側の百ちゃんやお茶子ちゃんが座っている席が良かったっ…!
(まぁ、訓練場に着くまでの辛抱、辛抱)
私は両手を膝の上で握り締めながら目を瞑り、そう心の中で呟いた。
「なぁ」
すると心を落ち着かせようとしたタイミングで轟さんが私に声をかけてくる。
『え、あ、はい!私ですか!?』
まさか彼の方から話しかけてくるとは思ってもいなかったので思わず動揺して声を裏返しながら返事をしてしまう。
「あぁ、そうだ」
『何か御用でも…』
「お前の個性って何だ?」