第24章 始まりの終わり 終わりの始まり
その後、私は来た道を戻りながら先程の会話を何度も頭で繰り返した。しかしどれだけ考えても答えは浮かばず私は考えることをやめた。部屋に戻るとすぐにベッドにうずくまり、誰にも届かないSOSを小さな声で呟く。
『…………誰か…助けて…』
それ以降、私は必要最低限 部屋から出ることはなく。家族で顔を合わせる時もあったが家庭訪問の会話の内容を詳しく聞くことは出来ずにいた。
そして、このような日々を過ごしている間に雄英での新生活を迎える日が目の前まで迫っていた。私は今、寮に移り住むための荷造りをしていて部屋にはいくつもの段ボールが積まれている。最後の荷物をまとめ終えて一息ついていると部屋にお母様が入ってきた。
「どう?お引越しの準備は。さっき百さんのお部屋を覗いたら百さんは丁度終わったところだったわ」
『私も丁度終わったところです』
私が返事をするとお母様は少し眉を下げて私を見つめる。
「そう…寂しくなるわね…百さんも言さんも居なくなってしまうのは…あの人もお家に帰ってくることはあまりないですし」
お母様は少し俯きながら話すあの人とはお父様のことだ。お父様はお仕事が忙しくて家に帰ってくることはほとんど無い。今家にいるのは神野の事や全寮制導入があったからで事が済めばお父様はすぐに家を出てしまう。
「たまにでいいですからお手紙など送ってくださいね」
お母様は私の両手を掴み少し寂しそうな顔を残しながらも笑顔を作った。
『……はい、送らせて頂きますね』
私は少し沈黙した後、お母様の手を握り返して今作れる精一杯の笑顔で返事をした。こうして 私は心にぽっかりと空いた大きな穴が塞がらないまま雄英での新生活を迎える。