第24章 始まりの終わり 終わりの始まり
『百ちゃん…』
「え、言!?貴女は待っていていいのですよ!」
私はお茶を入れるために台所に向かった百ちゃんを追いかけて台所でティーカップの準備をしていた彼女に話しかける。
『ううん、今日は一緒に準備したい…』
「…そうですか。ならこちらのソーサーの準備をお願いしますわ」
私が我儘を言うと百ちゃんは柔らかい微笑みを向けて隣に立つことを許可してくれた。紅茶の準備も終わりかけ、カップとソーサーが触れ合う音と紅茶の良い香りが漂う空間で私はゆっくりと唇を動かした。
『あの、百ちゃん』
「どうしました?」
──────あの夜、私を助けに来たって本当?
病院でオールマイト先生たちから聞いてずっと心に引っかかっていた事。しかしそれを気軽聞ける度胸など今の私にはなく、質問は喉の奥でつっかえて少し苦し紛れに話を誤魔化した。
『…ううん。何でもない…名前を呼びたくなっただけ』
「ふふ、今日は本当に甘えん坊ですね。いくらでも呼んでください」
その後、百ちゃんが入れてくれた温かい紅茶を飲んで体を休め、私と百ちゃんを真ん中にお父様とお母様が私たちを挟む形で眠りについた。
家に帰り待っていたのは家族の暖かい出迎え。
百ちゃんやお父様・お母様の温もりがヴィランに攫われた私の心の傷をすぐに癒した。
この家族で良かった。
この両親の娘で…
百ちゃんのいもうとで良かったと心の底から感じた。
こんな幸せな時間がずっと続くのだと…
そう思っていた。
でもその幸せが長く続くものでは無いと、後に私は思い知らされるのだった。