第23章 神野の悪夢
「それじゃあここで失礼するよ。お大事にね」
「言ちゃんまたね!」
ルーシーとホークスがベッドで横になる言に挨拶を交わして病室の扉を開ける。ちなみにホークスはまだここに残ると駄々を捏ねたのだがルーシーに首根っこを掴まれて無理矢理引きずられている状態だ。
『はい、わざわざありがとうございました』
扉の向こうに消えていくルーシーとホークスの2人を見送る。そして完全に姿が見えなくなったところで言はゆっくりと息を吐いた。
『思い描いた出来事が現実に……』
自分の手のひらを呆然と眺めながらそう呟いた。
突然ルーシーさんから言われた個性の話にまだ頭が追いつかない。自分の個性はただ言葉にした物や現象を具現化する能力だと思っていた。なのにそれ以上の、自分が頭で思い描いた出来事を現実に出来るなんて…そんなチートのような能力どうすれば良いのだろうか。まだ見ぬ大きな力に恐れを覚えるし、もし制御出来なかったらと思うとそれだけで不安になってしまう。それに…神野の時にオール・フォー・ワンにこの個性を奪われて悪い方向に使われたら…そう思うだけでゾッとした。
「あれ、そう言えば…どうして私の個性は奪われなかったのだろう?」
曖昧な記憶だが確かオール・フォー・ワンに頭を掴まれて個性を奪う個性を使われたはずだった。しかし私の個性は奪われていなかった。あの個性にも失敗や成功…何か確率的なものがあるのだろうか。その事についてルーシーさんさ何も話さなかったし、ホークスさんも特に……
ホークスの名前を口にした瞬間、先程まで忘れていた口付けの記憶が蘇る。そしてボッと顔から火が出るくらいに顔全体に熱を集めた。
まって…違う、違う。あれに深い意味は無いはず…あれは私が暗い言葉を吐き出すのを止めさせてくれただけで…でもあんな、あんな大人なキスする必要あった??
「う、うあ〜……!!」
言はベッドの枕に顔を埋めて行き場のない恥ずかしさを発散させるために大きな声を上げた。