第23章 神野の悪夢
『私の個性の話……』
ルーシーから出てきたその言葉に言は何故だか不安を抱く。そして滲み出てきたその不安を抑えるように自身の手を握った。
「前に言ったね。私と同じ個性だって」
『はい…』
ルーシーはベッドの前に置かれた椅子に座りながら話を始める。また、窓際の壁に寄りかかって話を聞いていたホークスは驚いたように目を丸めた。そして驚いたまま口を開こうとしたがその瞬間にルーシーが鋭い視線を送ってきたので色々と問いたい気持ちをグッと抑え、黙って彼女たちの話に耳を傾けた。
「オール・フォー・ワンと対面した時の事覚えているかい?」
『……あんまり覚えていないです』
「あんたはオールマイトがピンチの時にオール・フォー・ワンによって拘束されていた鋲を瞬時に崩した。これは言があの時 鋲が邪魔。いらない。そう思ったからだ。そしてその後、オール・フォー・ワンに向けて”消えて”と放った。その瞬間何が起こったか思い出せるかい?」
『…突然、オール・フォー・ワンにかまいたちのような斬撃が……そうだあの時、私。多分ですけど、どこか遠くに…それこそ風に流されるように消えて欲しいと思ったかもしれないです……』
たどたどしくオール・フォー・ワンと対面した時の記憶を思い出す言。ルーシーは彼女の話を聞いて静かに目を瞑った。
「…今までは実際に存在する物や現象を口にして具現化するだけで完結したいた。でも今、あんたの個性はその先に行こうとしている」
『その先…』
「自分の頭で思い描いた出来事が言葉とリンクして現実になる事だ」
まるで御伽噺のような、信じられないその内容に言は一瞬言葉を詰まらせた。
『…そんなことが有り得るのですか』
「ある。言霊とは願いであり思いなんだ。言葉にその願いや思いを乗せればそれは現実になり得る。いいかい、言葉は何よりも凶器になると自分が理解するんだ。そして個性を制御しな」
『はい』
優しく肩に手を置かれ、自身に向けられた真剣な眼差しをしっかりと受け止めて言はルーシーに返事をした。