第23章 神野の悪夢
時を少し戻して塚内直正たちがホークスを言の病室へ送り届けた帰り道。猫顔の警察官 玉川三茶がとある人物を見つけ思わず上司である塚内に耳打ちをする。
「あの塚内警部。先程すれ違ったのって…」
「あぁ、ルーシー・ラング・ミラクラウスだ」
「ですよね…なんであんな人がここに…と言うか”あの場所”から出てもいいんですか?」
「…先日の神野区の事件で上も慌てているのだろう」
「なるほど…」
「では三茶。引き続きオールマイトの病室前の警備を頼む」
「了解」
オールマイトが入院している部屋の前に到着すると三茶はピシッとした敬礼を塚内に向けて、それを見た塚内は病室の中にへと入っていった。
「オールマイト。戻ったぞ」
「塚内くん!言少女どうだった…?」
扉を開けて中にいるオールマイトに声をかけると彼は不安げに言との面会の進捗を聞いてきた。塚内は扉を閉めながらやれやれとした表情で結果を話す。
「理由は分からないがホークスとの面会は了承してくれたよ」
「そうか…!それなら良かった…」
「そう言えば先程ルーシーさんとすれ違ったのですが……」
「あぁ、彼女ならついさっきまでこの病室にいたよ」
やはりと言った顔付きで顎に手を当てた塚内。そしてルーシーがこの病院に来た理由をオールマイトたちに伺った。
「彼女はどうしてここに?」
「言について…特に個性についての話だ」
「…そう言う事ですか」
塚内はグラントリノからでた言葉を聞いて薄々は勘づいていたような反応を示した。
「それで内容は」
「今はまだ話せねぇ。だと」
「彼女らしいですね」
塚内は病室の端にあった椅子を持ち上げてオールマイトが寝ているベッドの前に置き、困ったように眉を下げて笑いながら椅子に腰をかけた。
「だから神野の事件で見たあの出来事は言少女に問うなとの事らしい。ルーシーさんいきなり来たから驚いちゃったよ」
「ここに来ることは事前にグラントリノでも聞いていなかったのですか?」
「全く。…まぁいつもの事だから慣れたけどな」
そう言ってグラントリノは頭を抱える。彼の反応を見るから昔から似たような出来事に振り回されてきたのだろう。
(……八百万言。一体何者なのだろうか)