第23章 神野の悪夢
『…ごめんなさい……ごめんなさい…ごめんなさい………!』
入院着のズボンをギュッと握りしめて突然謝り始める言。初めて見る彼女の泣き顔にホークスはギョッとした表情を一瞬顕にさせたが、直ぐに心を落ち着かせて彼女に泣いている理由を伺った。
「どうしたの?泣かないで…」
彼女の泣き顔を見るだけで胸が締め付けられるというのにこんなにも謝られては自分まで泣いてしまいそうだった。
『…私がオールマイト先生を引退に追い込んだんです……』
言から放たれたその一言。彼女が面会を頑なに拒否していた理由はこれかとホークスは考えた。
「ううん。言ちゃんは何も悪くない。悪いのはヴィランたちだ」
『オールマイト先生だけじゃないんです。1年A組の皆やB組の皆さん。先生方やプッシーキャッツ…そして神野区の方々に大きな怪我や迷惑をかけてしまった』
ホークスの言葉が届いていないかのようにただひたすら心の中に出来上がってしまった苦しみを吐き出し続ける。
『全部…!全部…!!私のせいなんです!!』
「違うよ」
『違いません!!ヴィラン連合のメンバーに水族館の時に襲ってきた女の子がいました!そしてその子を見た瞬間に思い出したんです!水族館で彼女が去り際に私に”またね”と言っていたことを!!』
水族館で言を襲おうとした少女トガヒミコがヴィラン連合のメンバーだと先の情報で把握はしていたが、彼女の後半の言葉に流石のホークスも目を丸めた。
『私はそれをホークスさんに伝えませんでした。あの時、あれ以上ホークスさんに迷惑をかけてはいけないと思って!あの言葉の意味が林間合宿の奇襲のことだったなんて……それを伝えていたら…!いいえ!まず水族館でヴィランに遭わなかったなんて嘘をつかなければ!!だから……!私の!私のっ…!!』
「言ちゃん……!!!」
これ以上彼女が考え込まないように、これ以上彼女が苦しまないようにとホークスは言を思わず抱きしめた。