第23章 神野の悪夢
「言ちゃん!!」
勢いよく扉を開けるとベッドの横に膝をついて倒れている言の姿と床に散乱した花瓶の欠片。立ち上がる時に体勢を崩してその拍子に花瓶を倒してしまったのだろう。言は顔を俯かせながら床に散らばった花瓶の欠片を拾おうとする。
「危ないから俺がやるよ」
手を怪我したらいけないとホークスは病室の扉を閉めて中に入り、急いで言の目の前でしゃがんだ。割れた花瓶の欠片を全て片付け終わりそっと視線を言に移した。花瓶を片付けている間、彼女は静かにただ黙ってペタりと床に座り込んでいて何を考えているのか考察しようにも顔を下に向けているので表情も分からず、どうしようかと悩んだ果てホークスはとりあえず彼女に話しかけた。
「それにしても本当に無事で良かったよ。俺、言ちゃんがヴィランに誘拐されたって聞いた時気が気でなくてさ。心臓が張り裂けそうになるってああいう事を指すんだなって……言ちゃん?」
うんともすんとも言わない彼女を不審に思ったホークスは恐る恐る俯かせている言の顔を覗いた。するとそこには瞳に大粒の涙を貯めて泣き顔を浮かべる彼女の姿があった。