第23章 神野の悪夢
「言ちゃんが面会拒絶?」
オールマイトが入院している病室でグラントリノ、そして塚内から聞かされた話にホークスは眉を顰めて怪訝そうに呟いた。
神野事件から一夜明けて世間は騒然としていた。病院のテレビや売店の新聞を見ても昨夜起こった神野事件の事ばかり。特にオールマイトの引退は大々的に取り上げられていた。そして言はあの事件の後オールマイトと同じ病院に運ばれ、身の安全の確保の為と検査の為に入院する事となった。しかしグラントリノたちが彼女の病室に行くと彼女は彼らの入室を許さず、誰の面会も受けないと強く拒んだのだ。突然の出来事に困惑していたオールマイトたち。そこにNo.3ヒーローのホークスが現れ、彼女と面識のある彼に救けを求めるようにこの話をしたのだ。
「事情聴取などはすんなりと受けてくれるのだがそれ以外は頑なに面会を拒絶されてしまってね」
困ったように塚内が頬をかく。ホークスもそんな彼らの様子を見て一考した後に口を開いた。
「…とりあえず彼女の病室の前まで行って声を掛けてきます」
塚内とその部下に案内されて言が入院している病室前に到着。彼らは案内が終わると後ろに下がり、ホークスの行動を見守るように視線を送った。その視線にむず痒さを感じながら病室の前に立ってドアをノックする。すると中からはホークスがずっと聞きたかった声が聞こえてくる。
「……はい」
弱々しく生み出された彼女の一声にホークスは胸を痛めながら唇を動かした。
「言ちゃん。ホークスだけど…お見舞いに来たんだ。入っても大丈夫かな?」
慎重に言葉を選んで入室の許可を得ようとする。しかし病室からは沈黙が続き、後ろにいた塚内たちも今回も駄目かと肩を落とそうとしたその時
「……他には誰もいないですか」
思わぬ返答に目を丸くするホークスたち。そしてすぐさまホークスは塚内にアイコンタクトを取り、その意図を理解した塚内は頷いてオールマイトの病室にへと戻って行った。
「うん、俺だけだよ」
「わかりました。今扉を開けるので待っていて下さい」
「え?!大丈夫!言ちゃんは安静にし……」
言葉を続けようとした瞬間、病室の中から人が倒れる音とガラスが割れる音が聞こえ、ホークスは脇目も振らず病室の扉を開いた。