第23章 神野の悪夢
オールマイトの攻撃の威力に旋風が起きる。旋風は周りの砂や瓦礫を巻き上げた。そして旋風の煙が晴れるとそこには地面に倒れ込むオール・フォー・ワン。
そして────────
左腕を上げマッスルフォームになり、勝利のスタンディングをするオールマイトの姿があった。きっとこの光景を目にした誰もが、声を上げて彼の名前を呼んだだろう。しかし幾度となく見てきた彼の勝利のスタンディングこの姿ももう……
目に焼き付けておきたいのに溢れ出る雫が邪魔をしてオールマイト先生の姿を歪める。
「な…!今は無理せずに───…」
「させて……やってくれ……仕事中だ」
私たちは見守った
平和の象徴…
No.1ヒーローとして最後の仕事を。
オール・フォー・ワンが敗れオールマイト先生が勝利した後、すぐさま救助活動が始まった。そしてオール・フォー・ワンが移動牢に入れられる瞬間を中継していたメディアのカメラに向けてオールマイト先生が指を刺し
「次は君だ」
そう一言…一言だけ言い放った。
短く発信されたメッセージは一見まだ見ぬ犯罪者への警鐘、平和の象徴の折れない姿だと世間は捉えただろう。
でも私たち…”緑谷くん”には真逆のメッセージ。
「私はもう出し切ってしまった」
そのような意味が込められたメッセージ。
『……あぁ…っ…』
私は色んな気持ちが心の中で混ざり合いその気持ちが溢れるように涙を流した。