第23章 神野の悪夢
オール・フォー・ワンがオールマイトに向かって、醜悪奸邪な腕を振り下ろしながら降下する。
「緑谷出久。讓渡先は彼だろう?資格も無しに来てしまって…まるで制御出来てないじゃないか。存分に悔いて死ぬといいよオールマイト。先生としても君の負けだ」
渾身の力を振り絞ったオールマイトの拳とオール・フォー・ワンの掛け合わせられる個性を詰め込んだ拳が重なり合い、大きな衝撃波が起きる。
『オールマイト先生…!!』
「俊典…!!」
言はグラントリノに支えられながら衝撃波の風圧に耐え、衝撃波の砂煙で見えなくなったオールマイトの名前を呼ぶ。
「そうだよ」
骨が折れる音を鳴らしながら、腕から血飛沫を上げながらもオール・フォー・ワンの拳を受け止めるオールマイト。
「先生として…叱らなきゃ……いかんのだよ!私が叱らなきゃいかんのだよ!!!」
「……なる程、醜い」
負けられない理由が、死ねない理由がある。平和の象徴としてだけではなく自分の師匠が自分を育ててくれたように、己も”彼”を……”緑谷出久”を育てるまでは死ぬ訳にはいかなかった。そんな覚悟に比例するようにオールマイトの左腕に力がこもる。
「そこまで醜く抗っていたとは…誤算だった」
そしてオールマイトは最後の一振り、右腕を囮にしてパワーを左腕に移し替えオール・フォー・ワンの顔を殴る。
「らしくない小細工だ。誰の影響かな……浅い」
しかし威力が足りずオール・フォー・ワンに攻撃は効いていなかった。彼は左に力を蓄え反撃の体勢に入る。
「そりゃア…腰が入ってなかったからな!!!」
同様に体勢を整え、強く歯を噛み締めてオールマイトがもう一度オール・フォー・ワンに向けて腕を振り下ろした。
…炎が消える。
繋がれた力は次へ。紡がれた想いは次へ。
そしてこれが最後───────……
「おおおお!!
UNITED STATESOF SMAASH!!!」