第23章 神野の悪夢
「言!!」
「そんな…!!」
オール・フォー・ワンに個性を使われた後、言は膝から崩れ落ち地面に横たわる。オールマイトとグラントリノは顔を歪ませてそんな彼女に視線を送った。また、言の前に立つオール・フォー・ワンは声高らかに喜びの姿を見せた。
「ハッハッハっ!!やっとだ…!!”前”は奪うことが出来なかったからね!しかし彼女は良い置土産を残していってくれた!これでこの個性は僕のも…」
しかし愉悦に浸っていた彼が突然言葉を失う。
「……個性が使えない」
冷たい声色で放たれたその言葉にオールマイトとグラントリノも驚きの表情を浮かべた。そして横たわっていた言に動きが見える。
『[消えて]』
そう一言だけ口にした言。すると突然目で追うことの出来ない斬撃が現れ、流石のオール・フォー・ワンも避けることも個性を使うことも出来ずに無数の斬撃を体に打ち込まれる。
「…ハハッ素晴らしい、素晴らしい!その力だ!!なぜキミの個性が奪えなかったのかはわからないが今はどうだっていいさ!もはや個性など奪えなくともいい、弔の仲間になってもらおう…無理にでもね!」
しかしオール・フォー・ワンは斬撃を体に受けたのにもかかわらず悠然と立ち上がる。だが無傷と言う訳では無い。かなりのダメージは受けている。
「でも今は邪魔だな…そこら辺で見学でもしていてくれ」
そう言い放つと言を強く殴り瓦礫の山へと吹き飛ばす。
「言!」
飛ばされた場所には運良くグラントリノが倒れていて、飛ばされてきた言を受け止める。
『……グラントリノさん?私…』
「ほんと、お前なんなんだ…!?不思議なやつだな!!」
グラントリノのその言葉に言は何も分からないような顔で首を傾げた。
「……まさか教え子に守られてしまうとは…自分が情けないよ…ほんとうに…!お嬢さん、もちろんさ救けるよ。言少女、ありがとな。笑うさ笑うよ」
声援が、想いが届く。この場から、画面の向こうから、日本中から。そしてオールマイトの右腕だけがマッスルフォームに戻っていく。
「ああ…!多いよ…!ヒーローは…守るものが多いんだよオール・フォー・ワン!!だから負けないんだよ!」