第23章 神野の悪夢
絶望の場に響くオールマイトの悲痛な叫び声。
「負けないで…オールマイト、お願い…救けて」
涙で顔をぐちゃぐちゃにした女性から放たれる救けを求める声。
『…──て』
大きな鋲に身動きを封じられたままとても小さな声で言は何かを呟く。
「おっと…すまないね、キミをすっかり待たせてしまった」
オールマイトが失意に飲まれるのを見て満足気なオール・フォー・ワンは思い出したように言のもとに向かってゆっくりと歩き出す。
『…ダメです……』
「何を言って……?!」
言を囲んでいた大きな鋲が音をたてて崩れ始める。
『あなたは…笑わなければ…!笑顔でいなければ…!笑顔で人々を救うのが平和の象徴なのだから!!』
ボロボロになっていく鋲の中でしっかりと大地を踏みしめて言葉を作る。
『だから、笑ってよっ…オールマイト!!』
その叫びと同時に完全に崩れ去った鋲の間から抜け出して絶望に打ちひしがれるオールマイトの前に立つ。
「ふむ…事前に集めた情報ではまだここまでの状態では無かったはず……隠していたのか、はたまた土壇場で覚醒したか……どちらにせよ好都合。少し問いたいのだが、キミはその個性を使いこなせるのかい?」
オール・フォー・ワンはぶつぶつと独り言を終えた後に顎に手を当てながら言に向けて嬉しそうに質問する。
『オール・フォー・ワン……貴方に平和の象徴は殺せやしない……消せやしない!私がっ…そんなこと、させない!!』
「ハイになっているね僕の声は聞こえていないようだ。まあいい、キミは僕のお客様だ。個性を献上してくれる……ね」
目で追えない速度で言の目の前に現れたオール・フォー・ワンが彼女の頭を掴み、個性を奪う個性を使おうとする。
「逃げろ言!!!」
「頂くよキミの個性」
グラントリノの叫びも虚しくオール・フォー・ワンは不敵な笑みを浮かべながら言に個性を奪う個性を使った。