第23章 神野の悪夢
言は目の前に広がる光景に言葉を失った。視界の先には更地が広がっていて、元は建物があったのであろう周りには多くのビルやアパートが崩れ瓦礫の山となっていた。そして倒れているプロヒーローたちとグラントリノ・オールマイトの目の前に立っている黒いスーツの男性。一目見ただけで脳が察知した。
「この男はやばい」と。
そしてこの男が”オール・フォー・ワン”だと。
「言少女!!何故ここに?!」
「言逃げろ!!」
オールマイトとグラントリノは言が現れたことに驚き、逃げるよう伝える。言も言われた通りこの場から逃げようとするが
『うっ…!』
突然大きな鋲が現れて、危害は加えられないものの動けないように固定される。するとオール・フォー・ワンが振り返り言に話しかける。
「やぁ、お目覚めかい?キミは僕の大切なお客様だからね…他の奴とは別の場所に転送させてもらったよ。暫く待っていてくれ、直ぐに終わらせるから」
「言少女を放せオール・フォー・ワン!」
「それは無理なお願いだ…彼女は僕のお客様…大事なね。戦うというなら受けて立つよ」
そしてオールマイトとオール・フォー・ワンの激しい戦闘が続いた。しかしオールマイトの活動限界は近く、体の半分はトゥルーフォームになりながら戦いを続けている状態だ。
「オールマイト、君が僕を憎むように僕も君が憎いんだぜ?僕は君の師を殺したが君も僕の築き上げてきたモノを奪っただろう?だから君には可能な限り醜く酷たらしい死を迎えてほしいんだ!」
オール・フォー・ワンはそう言うと左腕を肥大化させる。
「でけえの来るぞ!避けて反撃を…」
「避けて良いのか?」
含みのある言い方をしたオール・フォー・ワン。油断を誘うための発言とも取れたがそうではなく、オールマイトの後ろには建物の瓦礫に挟まれ身動きが取れなくなっている女性がいた。…もし避けたらどうなるか、それは明白であった。
「おい!!」
「君が守ってきたものを奪う」
「ぐっ…!!」
ワン・フォー・オールはオールマイト目掛けて個性を放つ。あまりの威力に突風が吹き荒れ、辺り一面が砂煙で覆われる。
「まずは怪我をおして通し続けたその矜恃。惨めな姿を世間に晒せ、平和の象徴」