第23章 神野の悪夢
暗い
真っ暗
自分の姿さえ確認することが困難な空間の中に唯一光が差し込む場所があった。そこにはポツンと女の子が座っている。
「……お姉ちゃん…どこ?」
女の子は辺りを見回しながら1人悲しげにそう呟く。
(あの子は誰…?お姉ちゃんって…?)
「私を置いていかないで…」
悲しげに呟いていた女の子は膝を抱えて泣き出してしまった。
(あなたは誰なの?どうして泣いているの?)
女の子は涙を流しながら誰かを探している。そして時間差で自分の頬にも涙が伝っている事に気がつく。
(私はどうして泣いているんだろ…)
頬に伝う涙を拭いながら言の意識は現実にへと戻されていく。
***
瞼を開けるとまた暗い空間。まだ夢の中なのかと一瞬疑ったが徐々に覚醒していく脳がこれが夢の中ではなく現実であることを理解する。
『…今のは…?』
割れるように痛む頭を抑えながら周りを見渡す。しかし周りには何も無く、先程まで隣にいた爆豪やオールマイト、そしてヴィランたちの姿も見当たらなかった。
『とりあえず…出口を探さなきゃ』
言は出口を探す為、気怠い体を持ち上げてゆっくりと立ち上がり足を進める。彼女が飛ばされたのは工場の中のようだが人の気配はなく、進むにつれて何故か建物が崩れていた。そして暫く歩くと光が差し込んでいる場所を見つける。きっと外に繋がる道だと思い、駆け足で向かうと想像通り外へと繋がる場所だった。しかし瞳に映った外の光景は予想もしないものだった。
『…なに、これ…』