第22章 途方もない悪意
「ごめんね言ちゃん。今手錠外してあげます」
目の前に出てきた少女はそう言って器用に言の手錠を外した。そして顔を上げて言に笑みを向ける。
「言ちゃんお久しぶりですね」
『あなた……!!』
「改めまして私トガ、トガヒミコって言います」
鈍い音を鳴らして床に落ちる金属製の手錠。それと同時に言は冷や汗を流して目の前にいるトガヒミコを見て硬直した。
「んー…やっぱり言ちゃんは血が付いていた方が似合うと思います」
トガは手錠を外し終わり改めて言を見て悩んだ素振りを浮かべたその直後、バッと制服からナイフを取り出して言に振りかざす。しかし言はその場に立ち尽くし避ける気配がない。
「おい!何ボサっとしてんだよ!!」
そんな言を見た爆豪は急いで駆け寄り、彼女を引き寄せられて間一髪トガの攻撃から彼女を守る。
「お前死にてぇのか!!」
『……ごめんなさい』
言の体を抱きしめながら叱りつける爆豪。しかし彼女は言い訳も何もせず、ただ弱々しく謝って爆豪の服の裾を握った。突然様子がおかしくなった彼女に違和感を抱きながらもこれ以上何かを言うのは逆効果だと考え爆豪は口を噤んだ。