第22章 途方もない悪意
「おい荼毘何遊んでんだよ!!俺も混ぜろ!」
突然吹き飛ばされて部屋に入ってきた荼毘を見てトゥワイスが声をかけた。部屋の内装は完全にバーテイストで、その部屋の端で倒れた椅子の横に戦闘態勢で立つ爆豪と電池が切れたように微動だにしない死柄木がいた。いつもは顔に装着している手がなくよく見るとその手は床に落ちていた。爆豪が彼に反抗した時の爆発で落としたのだろうか。そして呆然と床に落ちた手を眺めて立ち尽くす死柄木の後ろにいるスピナー・コンプレス・マグネ・トゥワイス・黒霧・トガ。トゥワイス以外の彼ら彼女らも吹き飛ばされてきた荼毘を見て何だ何だと視線を送った。
「おいおい、これが遊んでるように見えるかよ。どう考えても俺がやられてんだろうが」
「どうせ荼毘が怒らせるようなことしたんでしょ…それに今はコッチだってあの爆豪って子が暴れて大変なんだから」
「へぇ……」
そんな呆れた様子のマグネの言葉を聞いて荼毘は不敵に笑う。何かを閃いた彼は死柄木の前にいた爆豪に話を振る。
「なあ、爆豪くんは知ってるのかい?」
「あ゛?」
「言ちゃんが捨て子で八百万家の養子娘だってこと」
『やめて』
顔を俯かせながら拳を握り声を出す。
「確かに容姿は似てないよな。でも個性は似ている。……考えた事はねぇのか??自分は八百万家の名前をより有名にするための道具に過ぎな…」
『黙れ!!』
堪忍袋の緒が切れた言は荼毘の言葉を遮るように部屋中に響き渡るほどの大きな声を上げた。
「そんなに強い言葉を使うなよ…」
荼毘はそんな大きく動揺する言を見て楽しむようにそう言った。また爆豪は初めて見るその怒りを顕にする彼女の姿に驚きを隠せなかった。表情が見えず何も言葉を発さない彼女にどう声をかければ良いか戸惑った時、1人の少女が動き出す。
「言ちゃんに意地悪しないでください」
死柄木の後ろでバーカウンターに体を預けていた筈のトガがまるで言を助けるように彼女と荼毘の間に入る。