第22章 途方もない悪意
言葉の意味は分からなかったがきっといい意味では無いのだろうと言は詳しく問い質すのを止めた。
『とりあえず退けてもらってもいいですか』
「あぁ、悪い悪い。今すぐ退けるよ……
八百万家の養子娘、言ちゃん」
『何のことですか?』
喉の奥で一瞬息が止まる音がした。
───落ち着け、動揺を見せるな。平然を装え。きっとカマをかけているだけ。反応を見せてしまってはあちらの思う壷……冷静に冷静に…
全身の細胞全てを落ち着かせるように嘘を繕う言。そんな彼女の様子を見て荼毘は薄く笑いながら言葉を続けた。
「実の親の名前も知らない捨て子の言ちゃんは本当に悲劇のヒロインだねぇ」
『言葉の意味がわからないです』
「……しらばっくれんなよ。過去は、真実は消えない」
荼毘が冷徹な声で呟いた後に続いて隣の部屋からは爆発音が聞こえてくる。その音に言は目を見開いて視線を音のしてきた部屋に向けた。何度も何度も聞いたあの爆発音は爆豪のだから。そして爆豪に何かあったのかと言は部屋に向けて駆け出そうとするが、荼毘が懐から何かを取りだしそれを言に当てがう。
「勝手に動くな」
腹部に突き付けられた拳銃。その瞬間、身体の奥底からドス黒い感情が湧き上がり一瞬にして溢れ出る。そして溺れるようにその感情に飲み込まれ言は無意識に個性を使った。
「イテテ…容赦ねぇな」
『ふざけないで!何考えているの!ありえない!!』
言の個性で隣の部屋にへと吹き飛ばされた荼毘は全身を強く壁にへと打ち付けられ背中を押さえながら立ち上がった。そして彼の前に立っている彼女は酷く…酷く何かに恐れ、怒っている顔をして荼毘に怒号を浴びせた。