第22章 途方もない悪意
揺れる瞳は前を向き、蘇る彼女の記憶と同時に言葉を創りあげる。
「言は……人前では奥ゆかしく気丈に振る舞いますが、1人ぼっちが嫌いで…でもそのくせ何か苦しいことや辛いことがあった時は1人で溜め込んで、人知れず泣くんです」
1秒でも早く。救けてあげられるのならその可能性を信じて、賭けてみたかった。
「もしかしたら今も泣いているかもしれない……そう思うだけで心が締め付けられて、居ても経ってもいられなくて……今すぐにでもこの手で抱きしめてあげたい…!」
もう、”あの時”のような言は二度と見たくなかった。寂しさと苦しさと恐怖に泣き叫ぶ彼女の姿はもう……
「私の大事な大事ないもうとなのです…!!」
一度強く閉じた瞼を再度開いて百は凛々しくそう言い放った。そして共鳴し合う様に緑谷もたどたどしく唇を動かす。
「僕も…自分でもわからないんだ…手が届くと言われて…いてもたってもいられなくなって…」
───僕の原点は変わらない。何時だってこれがヒーローとしての原動力。
「救けたいと思っちゃうんだ」
───考えるより先に、体が動いていた
「……平行線か…」
緑谷の真っ直ぐな言葉と視線を受けて、どちらかが折れなければ終わらないであろうこの議論に瞼を閉じて一考する。
「──…ならば、俺も連れて行け」
(俺も覚悟を決めよう)