第22章 途方もない悪意
「飯田」
緑谷の肩を掴みながら苦しげな表情で訴えかけた飯田の後ろで轟が口を開いた。
「俺たちだって何も正面切ってカチ込む気なんざねえよ。戦闘無しで救け出す」
「ようは隠密活動!!それが俺ら卵に出来る…ルールに触れねぇ戦い方だろ」
凛とした面持ちで説得に入る轟。2人だって真正面からヴィランに立ち向かう程、雄英高校でヒーローになるために学んできているわけではない。ヒーローの卵の自分たちが出来る最善の救け方をしっかりと考えたのだ。そんな彼らの話を聞いて飯田は唇を寄せて目を見開いた。また、緑谷たちの後ろで口を噤んでいた百が1歩前に出る。
「私は轟さんを信頼しています…が!!万が一を考え、私がストッパーになれるよう…同行するつもりで参りました」
「八百万くん!?」
「八百万!」
百も覚悟は決まっていた。彼女の救出作戦の参加に飯田は動揺した様子で、切島は安心と喜びを乗せて彼女の名前を呼び上げた。そして百は何かを思い返すように右手を胸の前で握った。
「……切島さんと轟さんに言と爆豪さんを救けに行くとお話された時…大きな衝動が私の心を埋め尽くしました。それこそ目先の感情だけで直ぐにでも動いてしまおうとする位に。ですが!私も1年A組の副委員長なのです。最初は飯田さん同様にお2人を止めするつもりでした。しかしこちらに来る前、病室で思い出してしまったのです」