第22章 途方もない悪意
「俺だって悔しいさ!!心配さ!!当然だ!!俺は学級委員長だ!クラスメイトを心配するんだ!!言くんや爆豪くんだけじゃない!!」
───森の中でボロボロになった君を…病院に運ばれて治療を受ける緑谷くんを見て、俺はステインに襲われ床に伏せる兄の姿を重ねた。もしも緑谷くんが今以上に大きな怪我をしていたら兄のように取り返しがつかない事態になっていたかもしれない。そう考えるだけで恐ろしくて、堪らなく怖かった。そして同時に頭に浮かぶのは”あの時”交わした彼女との約束だった。
「…俺は約束したんだ!言くんと!!」
「え…」
飯田の口から出てきた言葉にピクリと反応を見せる緑谷。
「保須の病院で左腕の検査を受ける前に言くんに自身の過ちを全て打ち明けた。その時、彼女はただ黙って僕の話を聞き、最後に一言だけこう言ったんだ」
〘間違いは誰にでもあるよ。そして飯田くんが今回のことを反省しているのはもう痛いくらい伝わる。だから次は他の誰かが間違いを犯しそうになった時に飯田くんが怒って、正してあげればいいんじゃないかな。例えば緑谷くんとか……彼すぐ無茶するから〙
「言さん……」
緑谷は飯田から明かされた話を聞いて、左頬に伝わる痛みと心の奥底から湧き上がる様々な感情を噛み締めるように両手を握りしめた。また、普段からそう言われるまでに彼女に心配を掛けてしまっているのかと猛省もした。そして飯田も何かを思い出したように緑谷と同様に手を握りしめた。