第22章 途方もない悪意
夜になり、辺り一面が暗くなった病院の正面玄関前で緑谷と百の来訪を待つ切島と轟。2人は落ち着かない様子で話をしていた。昼間の話だけで彼らが来る確証はなく、まず第一に百が今回の救出作戦に手を貸してくれないことには切島と轟も行動のしようがなかった。
「八百万…考えさせてっつってくれた……どうだろうな…」
「まァ…いくら逸っても結局あいつ次第……」
「お、来た」
病院からは強ばった表情を顔に張りつけた百が出てくる。出てきた彼女はまだ傷が完治しておらず、私服に着替え手にはカバンを持っていた。そして百に続いて体中に包帯を巻いた緑谷も病院から姿を現す。
「緑谷……」
「八百万答え……」
切島は一言目に百が救出作戦に手を貸してくれるかの返事を聞いた。
「私は……」
百が顔を俯かせて返事をしようとしたその時
「待て」
4人の前には飯田が現れた。思わぬ来訪者に切島は無理矢理にでも止めに来たのかと顔に汗を浮かべる。
「……何でよりにもよって君たちなんだ…!」
歯を食いしばって緑谷と轟にそう問いかけた。
ヒーロー殺しの一件で私怨に駆られた自分の暴走を咎め、共に特赦を受けた2人。その2人が自分と同じ過ちを犯そうとしている事が我慢ならなかった。それに今から彼らが実行する行動の責任は全て雄英に降り注ぐ。ただでさえ保護者やマスコミ、世間への対応で気が滅入りそうな雄英の教師たちに多大な迷惑をかける可能性と雄英高校の看板に泥を塗る可能性を無視することなんて委員長である飯田は出来なかった。
「飯田くん違うんだよ。僕らだってルールを破っていいなんて……」
飯田を説得するために前に出た緑谷。その緑谷の顔を飯田は力いっぱいに殴りつけた。突然の出来事に百・轟・切島の3人は吃驚とした表情で彼らを見つめた。