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【ヒロアカ】folklore

第22章 途方もない悪意



「生徒の出ていい舞台ではないんだ馬鹿者!!」


とある病室に鳴り響く怒号。その声の主は普段は生真面目でいつもクラスメイトの事を慮る1年A組委員長の飯田だった。
……ヴィランが襲撃してから2日後、緑谷や他の重体の生徒たちは合宿所近くの病院に入院していた。特に緑谷は入院から2日間気絶と悶絶を繰り返しては高熱に魘される、そんな辛い生活を送り例え意識があっても頭を埋め尽くすのは爆豪と言が連れていかれる場面ばかりだった。そんな悔しさを噛み締める緑谷の前に現れる1年A組のクラスメイト。数は数人足りないが皆元気な姿で緑谷が入院している病室に足を踏み入れた。緑谷は見舞いに来てくれたクラスメイトたちを見てより一層あの時の事を思い出し、涙ぐんで爆豪と言を救けられなかった事への後悔の念をもらした。そしてその言葉を聞いた切島が緑谷に向けて驚きの言葉を放ったのだ。


〘じゃあ今度は救けよう〙


決して冗談などではなかった。昨日もこの病院に足を向けていた切島は偶然轟と出会い、百とオールマイトと警察が話し合っている場面に出くわしたらしい。その時に聞いてしまった百があの襲撃事件の際に咄嗟にヴィランの1人に発信機を取り付けたこと。切島と轟は百に発信機の信号を受信するデバイスを創って貰えればヴィランの居場所が分かり、爆豪と言を救けにいける。そう考え誰よりも悔しいであろう緑谷だからこそ、この話を持ちかけたのだ。


(やめてくれっ……!!)


目の前に広がった感情のみで動く。思い出すのは保須での…ヒーロー殺しの一件で、飯田は誰よりもその行動が無責任でどれだけの人に迷惑を掛けるかを知っていた。だから自分の二の舞にならないようにと声を上げたのだ。


「んなもんわかってるよ!!」


切島だって分かってる。その行動の愚かさが。


「でもさァ!何っも出来なかったんだ!!」


脳裏にこびり付いた目の前でヴィランに連れて行かれる言の姿。あの時ほんの少し距離が近ければ、自分が注意していれば手が届き救けられたかもしれない。


「ダチが狙われているって聞いてさァ!!なんっっも出来なかった!!しなかった!!」


爆豪がヴィラン犇めく森にいる中、自分は何も出来なかった。


「ここで動けなきゃ俺ァヒーローでも男でもなくなっちまうんだよ!」





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