第22章 途方もない悪意
荼毘は私を抱えたまま合宿所を出て森の中を走り抜けていく。私は脳震盪のせいで意識を保っているのがやっとの状態だ。そして荼毘が走り出してしばらく経った時、突然動きが止まる。響く鈍痛のなか薄く目を開けるとどうやら森の開けた場所で、目の前には複数のヴィランと緑谷くんたちがいた。
「言!!」
「言さん!!」
荼毘に抱えられている私を見て顔を青ざめ愕然とした様子で名前を呼ぶ轟くんと緑谷くん。また緑谷くんは一目見ただけでも分かる程に酷い怪我を負っていた。眩む景色と次々と現れるヴィランたちによって今の現状がハッキリと理解出来ないそんな時、追い打ちをかけるかのように黒霧がワープゲートを作り森の中に現れた。
「合図から5分経ちました行きますよ荼毘」
止まらない絶望に緑谷くんたちは顔を歪める。出現したワープゲートにヴィランたちが続々と入っていきこのまま成す術もなく逃げられてしまうのかと悔しげな表情を浮かべる。しかし仮面を付けた男がワープゲートの中に入った瞬間に何処からか青色の煌びやかなレーザーが放たれる。青山くんのレーザーだ。一直線に伸びたレーザーをくらった仮面の男の口からは2つの玉がこぼれ落ち、そしてそのこぼれ落ちた2つの玉目掛けて緑谷くんたちは一斉に飛びかかった。しかし緑谷くんは身体の活動限界に到達したのか足が止まり、2つの玉の目の前には轟くんと障子くんがいた。障子くんはしっかりと玉を掴んだが轟くんは掴む寸前で荼毘に横から取られてしまう。
「哀しいなぁ…轟焦凍。確認だ解除しろ」