第22章 途方もない悪意
鋭児郎の温かな手から安心感を貰い暫くすると扉の前で電気がブラド先生と論じ合う声が聞こえてきた。
「爆豪が狙われてんだ頼みます!行かせてください!!」
焦りと苛立ちを含んだ電気の声。クラスメイトが…友人がヴィランに狙われていて、その狙われている2人のうち片方はヴィランが潜む森の中に今も残されたまま。それを自分たちだけが安全な場所にいて何も出来ないなんてヒーローの卵として、まず友達としていいのだろうか……彼はその葛藤や歯痒さに耐えられなかったのだろう。
「ダメだ!」
懇願する電気の言葉に頑なに首を縦に振ろうとしないブラド先生。彼だって行けることなら今すぐにでも森の中に出て生徒たちを助けに行きたい。もう大丈夫だ、と不安と恐怖でいっぱいになった生徒たちを抱きしめてあげたい。しかし彼はヒーローであると共に教師でもある。今ここにいる生徒の安全。そして今から戻って来る生徒の安否を確認後、全員を最後まで護らなければいけない。それが彼の立場なのだ。
「ヴィランの数が不明なら戦力は少しでも多い方が!」
「戦えって!!相澤先生も言ってたでしょ!!」
「ありゃ自衛の為だ、皆がここへ戻れるようにな」
双方の譲れない思いがぶつかる中、扉からガタッと物音がする。
「相澤先生が帰ってきた、直談判します!」
「……や…」
電気が扉に近づくが扉の窓ガラスには相澤先生とは思えない、怪しい影が映る。
「待て、違う!」