第22章 途方もない悪意
「まァ…プロだもんな」
荼毘は上を向いてそう言う。相澤先生は荼毘の攻撃を受けたと思われたが間一髪、建物の上に避けていて無事だったのだ。荼毘は避けた相澤先生にもう一度個性を使おうと掌を向けるが何も起きない。
「出ねぇよ…うちの生徒から離れろ」
相澤先生は個性が使えなくなった荼毘を瞬時に捕縛武器で捕らえる。
「うおっ」
そして捕らえた荼毘を鮮やかに引き寄せて地面に押さえつけた。その瞬間首に回されていた手が離れ、私は荼毘から解放される。首に巻きついていた恐怖は未だまとわりついているが、僅かな安心感に嫌な汗を流しながら大きく息をした。
「目的・人数・配置を言え」
「何で?」
「こうなるからだよ」
相澤先生は荼毘の上に跨り、ギチギチと音を鳴らしながら腕を引っ張って尋問を開始した。しかし答えようとしない荼毘。捕らえられたというのに何故か余裕のある彼の表情や態度は焦りを募らせる相澤先生の怒りに触れたのか容赦なく荼毘の左腕を折り、その場には鈍い音が響く。
「次は右腕だ、合理的にいこう足まで掛かると護送が面倒だ」
「焦ってんのかよ?イレイザー」
荼毘が相澤先生を煽ると同時に今度は先程と反対側の腕から鈍い音が鳴る。すると森から眩い光が起こり大きな爆発音が聞こえてくる。
「何だ……」
「先生!!」
森の中から慌てた様子で飯田くんたちが現れた。相澤先生は一瞬飯田くんたちの存在に気を取られ、その隙をついた荼毘が相澤先生から瞬時に離れる。
「さすがは雄英の教師を務めるだけはあるよなぁヒーロー…生徒が大事か?」
その瞬間、荼毘の体から捕縛武器がすり抜ける。
「守りきれるといいな…また会おうぜ」
不気味な笑みを浮かべて相澤先生にそう言い放ち荼毘は液状になって消えていった。
「先生今のは…!!」
「……中入っとけ、すぐ戻る」
飯田くんに指示を伝えると相澤先生は薄暗く何が起こるか分からない森の中にへと消えていった。その後、私は飯田くんたちと急いでブラド先生や補習組のみんながいる部屋にへと向かった。
『どうしよう…』
自分がヴィラン連合の狙いであるかもしれないという不安を抱いて。