第22章 途方もない悪意
首筋からひしひしと伝わる緊急事態を知らせる感覚。勢いよく壁に押し付けられた背中はヒリヒリと痛む。また首を掴まれ壁に押さえつけられたのが一瞬の出来事だったため判断が遅れ、首を掴んだ人物の顔を見ることができなかった。
『…っ誰!!あなた!』
私は首に回された手を引き剥がそうとしながら目の前のヴィランと思わしき男に声を振り絞り問いかけた。
「俺か…まァ、荼毘 とでも名乗っておこうか」
私の首を掴んでいる人物は荼毘と名乗った。飄々としている荼毘の容姿を確認すると無造作な黒髪で瞳は水色。焼け焦げたように変色した皮膚を体中につなぎ合わせたような、そんな姿をしていた。
『私に何の用…!』
「用…そうだな簡単に言えばヴィラン連合のボスがお前を欲している 」
『ヴィラン連合?!なんで私を…!いや、それよりもその情報を知っていると言うことはあなたもヴィラン連合の輩ね。私が目的ならクラスの皆には手を出さないで』
「自分よりもそっちの心配かよ…さすがヒーロー志望素晴らしいねぇ。でもそりゃ無理だな…既に手、出しちまってる」
『なっ!?』
荼毘が私にそう告げた時、マンダレイさんのテレパスでヴィラン2名が襲来して来たと伝えられる。個性を使用したマンダレイさんの声は緊迫していて既にヴィランと対面…いや戦闘になっている可能性もあった。
『ここに何人来てるの!』
「おいおい、自分の立場を考えろよ。お前はそんなこと質問できる立場じゃ……と、来たな」
呆れた顔でくつくつと笑う荼毘は合宿所の入口に向けて手を構えた。
『……まさか!?』
私は荼毘の言動の意味を少し考え、荼毘は生徒の安否を心配する相澤先生が合宿所から出てくると踏んで入口に手を構えたのだと予想したのだ。そしてその予想は当たり相澤先生が合宿所の中から慌てた様子で出てくる。
「………マズいな」
相澤先生は目の前に広がる燃え盛る森を見つめてそう呟いた。
「心配が先に立ったかイレイザーヘッド」
「! ブラド…」
相澤先生は瞬時に荼毘の気配を察知するが荼毘が先手を打って掌から青色の炎を放つ。
「邪魔はよしてくれよプロヒーロー。用があるのはおまえらじゃない」
『相澤先生!』