第21章 林間合宿
『……え、病?』
私は轟くんの口から出てきたその言葉に呆然とし、つい同じ言葉を聞き返してしまった。
「あぁ、お前食後には必ず何かの薬を飲んでいるし。理由は知らねぇが今回の合宿わざと風呂の時間ズラして誰とも会わないように入ってるよな」
交じり合う視線。何もかもを見透かされているような彼の瞳に捉えられ私は無意識に右腹部を押さえた。そしてその様子を見た轟くんは伏し目がちにゆっくりと唇を動かした。
「……USJの戦いでお前の怪我を手当した時に見ちまった右腹部の大きな傷跡…手術痕みてぇなのを。憶測でしかなかったが、もしかしたらと思って」
『そっか……でも病とかそういうのじゃないの』
轟くんの話が終わると私は椅子の背もたれに大きく体を預けて両手で顔を覆う。そして顔全体を覆っていた両手を下に少しずらして瞳だけを覗かせる。
『薬は物心ついた時から飲んでいる偏頭痛を抑える薬で、お腹の傷はいつ出来た傷なのか、手術した傷跡なのか…詳しい事は分からない。でも私は幼い頃かなり病弱だったらしくて、多分それが関わっているんじゃないかと思ってる』
「…親とかに聞かねぇのか」
『……最初は聞こうと思っていたけれど、色々あって後回しにしてたらいつの間にか聞きづらくなっちゃってね』
「そうか…」
親との関係は轟くんも色々と抱えており、自分と重ねたのか深く詮索はしないようだった。
『お風呂の時間をズラしてるのは…ちょっとね中学生の時にこの傷を見られたら気持ち悪いって言われちゃって。そこからなるべく人に見られないようにしてるの…』
「そうだったのか……悪い。突っ込んじゃいけねぇ話題だったのに俺の勝手な憶測で聞き出すようなことして」
轟くんは自身の行動を悔やむように両膝に置いていた手を強く握りしめた。