第4章 戦闘訓練のお時間
その後、爆豪さんは校門を抜けて帰って行った。
───ってあれ、爆豪さん帰っちゃった?話に夢中で爆豪さんに用事があったのにすっかり忘れてしまってた…
『仕方ないか…これは明日渡そう』
言は自分の右手にある爆豪の生徒手帳を見ながらそう呟いて帰ろうとした時だった。
「あ!緑谷少年!何を話していたんだい!?」
───危ない〜…そうだったまだ緑谷さんとオールマイト先生が残ってた…
私はそう心の中で呟きながら急いで柱から出そうになった体を引き戻した。
「オールマイト…!実はかっちゃんに僕の個性の話を…」
「話したのか…!」
「すみません!!!母にも言ってなかったのに…何でか…言わなきゃって…本当にすみません……」
───緑谷さんの個性の話…やっぱりさっきの緑谷さんの話は真実。そしてこの状況からして彼に個性を渡したと考えられる人物は…
「…幸い爆豪少年も戯言だと受け取ったようだし…今回は大目に見るが…次はナシで頼むぞ!この力を持つという責任をしっかり自覚してくれ!」
オールマイト先生の真面目な声のトーンに私はおでこや背中からじんわりと冷や汗をかく。
「知れ渡れば力を奪わんとする輩が溢れかえる事は自明の理!この秘密は社会の混乱を防ぐ為でもあり君の為でもあるんだ、いいね?」
「はい…」
「そして……そこで聞いている八百万少女もいいかい?」
「え?!!」
緑谷さんへの忠告を終えるとオールマイト先生はそう言って私が隠れている校舎の柱に視線を送った。緑谷さんも開いた口が塞がらない状態だ。
───やっぱり気づいてるよね…あのオールマイト先生が私の存在に気が付かない訳が無い。最初はスルーしていたけれど緑谷さんが”個性”の話をしてしまったのなら話は別。あんな秘密を知ってしまった私を野放しにはしておけない…
さっきの発言以降何も言ってこないオールマイト先生の謎の圧に耐えながら思考を張り巡らせるが無駄な事をしても意味が無いと私は諦め、観念して柱から顔を出す。
『はぁ…降参です』
「言さん!?」
驚きの表情を見せる緑谷に向けて言は今作れる精一杯の作り笑顔を送った。
『こっそりお話聞いててごめんね…緑谷さん』