第21章 林間合宿
「タオルは僕が拾うからそのまま顔を上げないで」
『はい……』
タオルを拾い上げるだけだと言うのに何故だか極度の緊張感が言たち2人を襲う。
「っ…取れた!!はぁ〜…良かった。迷惑かけてごめんね言さん」
『ううん。取れて良かったね』
「もう顔上げてだいじょう…」
そして無事タオルを拾い上げることが出来た緑谷。言も彼がタオルを拾い上げた事に土下座の状態で喜びを見せる。緑谷がタオルを腰に巻き終わり言が顔を上げても大丈夫な状態になったその瞬間、恐れていた事態が発生する。
「み、緑谷…?!」
「緑谷さん?!」
言たち2人の前に耳郎と百が現れたのだ。
『あれ響香ちゃんに百ちゃん?今私が落としたタオルを緑谷くんが無事拾えてね、腰に巻き付け終わった所なの』
「待って言さん今喋られるとややこしくなるから!!」
普通であれば急いでこの場の状況の説明をしなければいけなかったのだが、言はそれよりも先に緑谷がタオルを拾えた事を喜んでしまい話がややこしい事になる。しかも土下座の状態で説明してしまったのだからもう訳が分からない状況である。
「言が落としたタオルを…緑谷さんが拾って腰に巻き付けた……?」
「ヤオモモー?!緑谷アンタ……」
案の定言の説明不足の言葉を聞いたせいで勘違いをした百が立ち眩みその場でよろけ、その百を耳郎が受け止めた。そして耳郎は百を受け止めながら緑谷に犯罪者を見るような視線を送った。また追い討ちをかけるように飯田も登場する。
「なっ…緑谷くんっ!まさかキミが……」
「違う!!だから違うんだってー!!!」
飯田は綺麗に言と緑谷を三度見をすると片手で眼鏡の位置を整え、愕然とした表情で緑谷を見つめた。あらぬ誤解を植え付けられた緑谷は顔を青ざめながらも必死に声を上げ、合宿所にはその緑谷の声が谺した。その後、百と耳郎、飯田の3人にこの場の誤解を解くのに30分程度費やした。
こうして波乱の林間合宿1日目は幕を閉じた。