第21章 林間合宿
管理人室を後にした私。来た道を戻ろうとすると前には慌てて脱衣所に戻ろうとする緑谷くんの姿と彼の後ろに落ちている白いタオル。
(ん?……白いタオル?!)
私は一瞬止まった脳をすぐに動かして大きな声で緑谷くんを呼び止める。
『緑谷くん!タオル落ちてる!!』
「え?!!」
緑谷くんはまさかの事態にその場に急ブレーキをかけて立ち止まる。私は急いで落ちていたタオルを拾い上げて緑谷くんの下にへと駆けつける。
『待ってて今届けるかっ……ら』
私は拾ったタオルを緑谷くんに届けることだけを考えるばかりに足元を疎かにして通路の段差に気が付かず大きく転んでしまい、その拍子に手にしていたタオルを手放してしまう。また私の体は通路の床と完全に仲良し状態だ。
「言さん?!大丈夫!?」
『いてて…だ、大丈夫。今タオル届けるから…』
転んだ私を心配してか緑谷くんが近づいてくる音が聞こえる。私は離してしまったタオルを拾うために急いで床にくっついた顔を上げ、体も起き上げようとする。
「言さん待って!!!」
しかし緑谷くんの大声に私はピタリと顔と体を起こし上げるのをやめる。変に起こし上げるのを止めてしまったせいで私の今の姿は完全に土下座状態だ。突然の彼の大声に驚きはしたが私は今の危機的状況を把握。私が転んだことを心配して駆け寄った緑谷くん。ヒーロー志望の彼が転んだ人間を心配して駆け寄るのは至極当然の事であったが今の彼は産まれたての姿。全裸の少年とその少年の前に土下座姿の少女。こんな所を誰かに見られでもしたら……事件性しかない。そして彼の産まれたての姿を守るタオルは彼と私の間にある。その状況下で私が顔を上げることは絶対に許されない。まさにサドンデス。一分のミスも許されない。