第21章 林間合宿
『「普通…?」』
普通にと言った言葉に疑問を持った私たち。そこに飲み物を持ってピクシーボブさんが入って来た。
「マンダレイのいとこ…洸汰の両親ね、ヒーローだったけど殉職しちゃったんだよ」
「え……」
「2年前…ヴィランから市民を守ってねヒーローとしてはこれ以上にない程に立派な最期だったし名誉ある死だった。でも物心ついたばかりの子どもにはそんなことわからない親が全ての世界だもんね」
マンダレイさんは重い口を開き、私たちに話してくれる。
「自分を置いて行ってしまったのに世間はそれを良い事・素晴らしい事と誉めたたえ続けた」
『……残酷、ですね』
「うん、そんなこともあって私らのことも良く思ってないみたい…けれど他に身寄りもないから従ってる…って感じ。洸汰にとってヒーローは理解できない。気持ち悪い人種なんだよ」
私と緑谷くんはそんな洸太くんがヒーローに否定的になった辛い理由の話を聞いて複雑な表情を浮かべる。そして私は緑谷くんを見てゆっくりと口を開いた。
『緑谷くん…』
「…何?言さん」
『今、言うべきか悩んだんだけどさ……』
「うん…?」
『服着なくて大丈夫…?』
私は髪を濡らし腰にタオルしか巻いていない緑谷くんにそう告げる。
「え、あ!!僕ずっとこうだった?!」
『うん。脱衣所の前で会った時に言おうかなと迷ったんだけど緑谷くん慌ててたし、もしかしたらお風呂の後はいつもこうなのかなって思って……指摘するのも悪いかなって……』
「こんな所で言さんの献身的な気遣いが…!!」
『言ってあげれば良かったね』
「いや、こっちこそごめんね言さん!!マンダレイ!ピクシーボブ!それじゃあ失礼しました!」
そう言って緑谷くんは今の自分の格好を思い出したのか慌てて脱衣所にへと走っていく。
『では、失礼しました』
私も緑谷くんの後を追うようにマンダレイさんとピクシーボブさんに頭を下げて部屋を出る。
***
(そういえば…緑谷くんと一緒に来た彼女はもうお風呂に入った後だったのかしら。他の女の子たちはまだ入っていたみたいだけど、何かワケあり……?まぁ私が深く考えても仕方ないか)