第21章 林間合宿
「大丈夫か?」
『え?』
慌てて返事をしたのは良いが轟くんに突然心配され私は何の事かと困惑する。
「顔色わりぃぞ」
『あー…少し酔っちゃたのかも…』
轟くんの言葉を聞いて少しの熟考の末、彼は私が落ち込んでいるのを体調が悪いと勘違いしたのだと言う結論に至る。また、そんな轟くんの気遣いを無駄にするのもあれだったので私はバスに酔ったと咄嗟に嘘をつく。
「そうだったのか。なら…こうしてれば少しはラクになるだろ」
『え…』
そう言って轟くんが取った行動に私は思考を固まらせてフリーズする。今の状況を説明すると、轟くんが私の頭を自分の肩に寄せて私は轟くんの肩にもたれ掛かる。そんな状況になっている。
『あっ、あの轟くん…ここまでしなくても大丈夫だよ…』
「いや、お前すぐ無茶するからダメだ」
流石にここまでしてもらうのは申し訳なかったので轟くんに遠慮の意を伝えるが意外なところで頑固な轟くんは引かないようだった。まさか轟くんの気遣いを無下にしないようにとついた嘘がこんな事になるとは思わなかった。
(どうしよう…でも今更嘘だったなんて言えないし。と言うかコレってかなり恥ずかしくない……?)
そう自問自答し始めると体の底から恥ずかしさが湧いてきて頬を赤らめる。
「おい、言顔も赤いが大丈夫か熱でもあんのか」
『え!ち、違うよ!うん大丈夫、大丈夫だよ』
「ならいいんだが…」
轟くんの問いに私は慌ただしく否定を見せたが彼の鈍感さが救いとなり深く追求されることはなかった。そして悩んだ末、結局私はバスが止まるまでこのままでいることにした。
「あれ?言さんどうしたの?」
「少しバスに酔ったらしい」
「それは大変だ!!大丈夫か言くん!」
バスが止まるまでこのままでいようと決心をした矢先、隣の席の飯田くんと緑谷くんに私が酔った事(嘘)が伝わってしまいクラスの皆にも広まってしまう。
(あぁ…恥ずかしい…)
半分ヤケクソで目つぶり轟くんの肩に自分を預ける今の私は恥ずかしさと後悔で身が押しつぶされてしまいそうだった。