第20章 2人の英雄
階段を駆け下りて言は爆豪に説明した”ある物”が書かれた本を見つける。そしてその本を手に取り、また風力発電エリアに引き返そうとする。
『爆豪くん……それじゃあさっき言った通りによろしく』
「………わーてるよ」
真剣な視線を爆豪に向けて頼み事をする言。爆豪はかなり嫌そうな顔をしながら彼女に返事をした。その直後、言は爆豪に横抱きで抱えてもらい、手に取った本を一心不乱に読み始める。言を抱えた爆豪はそのまま一心不乱に非常階段を駆け上がる。
「クッッソ、ほんとに覚えとけよ!」
爆豪は言に向けてそう言い放ったが、本を読むことに夢中な彼女にはもう聞こえていない。そして先程までいた風力発電がある場所にへと戻って来た。
「爆豪!言!やっと戻ってきたか…って…どうしたお前ら?!!」
やっと戻ってきた言と爆豪の帰還に安堵の表情を見せる切島。しかしその表情は直ぐに崩れ去り、無我夢中で本を詠唱する言とそんな彼女を恐ろしい形相で横抱きする爆豪の姿を見て驚きを見せた。
「何してんだ…」
「え、えぇ?!」
そんな異様過ぎる光景に轟と麗日も流石に困惑した表情で声を漏らした。
「…おい!まだか?!」
そんな場の空気に耐えきれなくなった爆豪が言に問いかける。
『〜〜〜……─────…!終わった!』
「終わったって、何がだ?」
『警備システムを止める”とっておき”だよ』
「警備システムを止めるとっておきって…」
「じゃあ、メリッサさんは?!」
不思議そうに首を傾げる轟と切島の横で、まさかと嫌な出来事を頭で想像してしまった麗日はメリッサの容態を言に聞いた。
『緑谷くんの連絡で今は気を失ってるって…だから変わりに私が止める』
「言ちゃんが止めるってどうやって……!?」
『そこでさっき言った”とっておき”の出番ってわけ!』
言は爆豪から降りて、手に持っていた本を地面に置く。
『さぁ…ヴィランたち。止めれるもんなら止めてみなさいよ…わたしの”とっておき”』
不敵に口角を上げた言は両指を重ねて合わせて腕を伸ばし、個性を使った。
『[ 軍 事 衛 星 ]!!』