第20章 2人の英雄
ミシェルと言が微笑ましく笑いあっている時、爆豪と切島がやっとロビーに到着する。
「ん?言誰かと喋ってんな」
「……ありゃミシェル・クラウンとブライト・クラウンだ」
目を凝らし言の目の前にいる人物を凝視した爆豪は内心驚きつつ老夫婦の名前を口にした。
「へー、有名な人なのか?」
「クソほど有名だわ馬鹿。ヒーローコスチュームの会社で毎年あの有名なブランド”Clore”と1・2番を争う”Michelle・Crown”を運営する夫婦だわボケ」
「おお、それなら俺も聞いた事があるぜ!と言うことは言はあんな凄い人たちと関わりを持っているってことか……」
「…生きる世界が違えってこったな」
「そっか……」
爆豪のその言葉を聞いて彼女との身分の差を思い知らされ何とも言えぬ気持ちを抱いた切島。また2人は流石にそんな有名人と会話をしている所に割って入るのは気が引けたので話が終わるまで待とうと、言たちの会話に聞き耳を立てた。
「それにしても言ちゃん。すっかり元気そうね」
「確かにそうだ。小さい頃はあまりの病弱さに君の存在すら隠されていたからね。突然八百万家にもう1人御令嬢がいた、なんて聞かされた時は驚いたよ」
『いやだブライト様。もう昔のお話ですよ』
昔は病弱だったと言う言葉に爆豪と切島は黙って顔を見合わせる。今までの彼女の様子を見る限り病弱と言った言葉とは無縁そうに感じるが爆豪は彼女がいつも食事の後に欠かさず飲んでいる薬の事を思い出し、切島は言の腹部に残っている大きな傷跡の事を思い出した。
「では、私達はそろそろお暇するかな。言くんも今日のレセプションパーティに参加するのだろう?」
「ならまた会場で会えるかもしれないわね」
『そうですね、お会いした時はまたお話しましょう。それではまた後で』
そう言ってドレスの両裾を持ち上げ頭を下げる様はまるで御伽噺に出てくるようなお姫様で、そんな言の優雅な振る舞いはホテルのロビーにいた人々の視線を集めた。クラウン夫妻は人々の注目を集める言を見て我が子の事のように自慢げに嬉しさを顔に滲みだしロビーから去って行った。
((なんか、余計出づらくなった……))