第20章 2人の英雄
部屋に入り、言は早速正装に着替えようと正装が入ったバッグを開けると中には真っ白なフィッシュテールのドレスが入っていた。
『お母様が準備したのかな…?すっごく綺麗……』
そう言ってバッグから取り出したドレスを見つめながら言はヒーローコスチュームを脱いでフィッシュテールドレスを身につける。
(ん?これって……)
そして髪もパーティー用にアレンジし、薄く化粧を施す。言は全ての準備を終わらせると高さが低めのヒールを履きホテルのロビーへと向かった。
『鋭児郎と爆豪くんはまだいないか…』
少し早めに到着してしまった言はロビーの椅子に腰掛け、彼らが来るのを待つことにした。すると背後から仲睦まじそうな老夫婦に声を掛けられる。
「もしかして八百万言ちゃんかな?」
『はい、そうで……まぁ!クラウン様ご夫妻ですか、お久しぶりです』
ご夫婦は言のことを知っているようで言も夫婦の顔を見ると知り合いなのか目を見開き、出会いを嬉しそうに微笑んだ。
「前にあったのは君が14の時だったかな」
「また一段とお綺麗になられて」
『ミシェル様もいくつになられてもお綺麗ですよ』
ミシェルと言う女性はきっと外国の方なのだろう日本人とはまた違った顔立ちで、2人とも若い時はかなりの美男美女であることが伺える容姿をしていた。隣に立つミシェルの夫も紳士の名が良く似合う白髪の男性で、嬉しそうに言と会話をするミシェルを愛おしそうな眼で見つめていた。
「言ちゃんにそう言って頂けると嬉しいわ。それに私のデザインしたそのドレスもよく似合っている」
『やはりこのドレスをデザインされたのミシェル様でしたか…!着心地がいつもミシェル様に仕立ててもらっているお洋服と同じだったのでまさかとは思っていたのですが』
「言ちゃんの為に作った世界でたった一つだけのドレスよ」
『嬉しいですわ。大切にしますね』
「言ちゃんが結婚する時の花嫁衣装も是非作らせてね」
『もうミシェル様ったら。まだお早いですよ』
そんなミシェルの冗談に2人は微笑ましく笑いあった。