第19章 エンカウンター
話したような話していないような。記憶は曖昧だったが知られていても別に困る事でもなかったのでそれ以上言及することはなく、私と鋭児郎は会計を終わらせた。そしてお店を出て会話を弾ませながら何となく鋭児郎について行くと見知らぬ家の前に到着する。その家の表札を確認すると爆豪の文字が並んでおり、その文字を見た瞬間に爆豪くんの家に来たのだと脳が理解を示した。
『今思ったんだけど爆豪くん来るの?』
「緑谷や轟がいるって知ったらあいつは行くと思うぜ!!とりあえず呼ぶだけ呼んでみようぜ!」
夏の太陽にも負けないぐらいの笑顔を浮かべてそう言うと、鋭児郎は爆豪くんの家のインターホンを押した。
「はーい!!」
インターホンが鳴ると女の人の声が家の中から聞こえてくる。そして暫くして爆豪くんの家の扉が開く。
「あら?どちら様かしら?」
扉から出てきたのは見た目が爆豪くんにそっくりの若い女性の方で、扉からは鋭児郎が壁に隠れて見えていないのだろう。私だけが見えているようで彼女は思わぬ来客に不思議そうに首を傾げた。
「おはようございます!爆豪いますか?」
「あ〜切島くん!!勝己今寝てんのよー!すぐ起こすから上がって上がって!!」
インターホンが設置されていた壁から顔を出して爆豪くんそっくりの女性の方に挨拶をする鋭児郎。すると鋭児郎の顔を見た瞬間、女性の方は納得したように話を進めた。
「あ、まだ寝かしてて大丈夫っす!!時間になっても爆豪がまだ寝てたらお願いします!!」
『突然お邪魔してすいません…えっと、爆豪くんのお姉さんですか…?』
鋭児郎の話に続いて私がお礼を言い、そう質問すると予想外の返答が出てくる。
「あらやだ!!私そんなに若く見える?!私は爆豪光己!勝己の母親よ!!」
『えっ?!爆豪くんのお母様でしたか!すみません…!』
まさか爆豪くんのお母様だとは思わず、私は直ぐに頭を下げる。
「いいのよ!いつもの事だから!切島くんも最初同じこと言ってたわ〜」
「だって光己さん若々し過ぎるんすもん!こんな美人な母親持って爆豪は幸せもんすっね!」
「やぁ〜だ!!ほんとに切島くんはお世辞が上手なんだからァ!」
光己さんは満更でもない顔で鋭児郎の肩を叩く。
「さっ、外は暑いでしょ!早く上がって上がって!」