第19章 エンカウンター
プール利用当日。私は自宅の玄関で学校に向かう百ちゃんを見送り終わると本を片手に自室にへと戻ろうとした。しかし自室にへと向かう途中でリビングの机に百ちゃんがスマホを忘れていったことに気がつく。
『まだ間に合うかな…』
とりあえず自分のスマホと財布は持っていたので、百ちゃんのスマホを手に取るとすぐに家を飛び出して彼女を追いかける。しかし今の季節は夏。少し外にいるだけでも汗が溢れ出てくるくらいの暑さだ。
『暑すぎる…1回そこのコンビニに入ろう』
私は夏の暑さに負け、目の前にあったコンビニ駆け込む。中にはいるとクーラーがしっかりと効いているようで、体中にひんやりとした感覚を覚えさせた。そしてコンビニに入ったついでに凍った飲料を買って行こうと飲料売り場の扉を開けると、後ろから聞き馴染みのある声が聞こえてくる。
「あれ言?」
声をかけてきた人物の正体は鋭児郎で、彼も買い物中だったのだろう。買い物かごを手にしながらキョトンとした顔で私を見つめていた。
『ん、なんで鋭児郎がここにいるの?』
「それはこっちのセリフだよ!俺は今日緑谷たちが学校のプールで特訓するって言うから、爆豪を誘って行こうと思って」
『そうなんだ。女子も学校のプールで息抜きしようってことになってたの。今日の学校は1年A組勢揃いだね』
「んで、言は1人で何してたんだ?」
『百ちゃんが携帯電話を忘れていったから届けようと思って』
私は凍った飲料を手に取り、売り場の扉を閉めると百ちゃんが忘れていったスマホを指さした。
「ん?じゃあ言は元々プールに行く予定じゃなかったのか?」
『あー…うん。私、ちょっとプールは…』
鋭児郎の質問に私は言葉を詰まらせながら曖昧な返事を返す。すると鋭児郎は何かを思い出したように目を見開き、口を開いた。
「あー…そういや言昔から水中苦手だったよな。喋れなくなるからとかなんかで」
『そうそう。ってあれ…?私鋭児郎にその話したっけ?』
最初は流れのままに頷いたものの、水中が苦手だということを鋭児郎に話した記憶がなく疑問を覚える。
「え、あっ…ああ!この間話しただろ!言もう忘れちゃったのかよ〜!」
『ん〜…そうだったかな…』