第19章 エンカウンター
ホークスは思わず口から出てしまいそうになった言葉を飲み込んで気持ちを切り替え、惜しくはあるがこれ以上言とのデートを続行するのは不可能と判断しその事を言に伝える。
「せっかくのデートだったけどこれ以上外にいるのは危ない。今日はもう送るよ。それに俺も上から呼び出されたしね」
『短い時間でしたけど楽しかったです…ありがとうございます』
折角忙しいヒーロー活動の合間を縫って休暇を取り、出掛ける予定まで立てて貰ったのに自分のせいでこんな事になってしまったと言う申し訳なさを感じながらも言はホークスにしっかりとお礼を伝えた。
そして言は自宅にへと向かう車内で窓の外を眺めながらふと、とある言葉を思い出した。
(そういえばあの時…)
〘”またね”〙
あの少女が逃走する間際、私に小さく放っていった一言。あれはやはり言葉そのままの意味でまた会いに来る…即ち襲いに来るという事なのだろうか。しかしその事が怖い、そう感じることは不思議と無かった。彼女は確かに今日私を刺そうとしていたが殺そうとまではしていなかった気がする。彼女から殺気は全く感じ取れなかったし、ナイフで狙われた場所も心臓や頭ではなく完全に腕を狙っていた。去り際のセリフを言う時だってまるで友達との約束を交わすみたいで…彼女の目的は一体何なのだろうか…?これってホークスさんに伝えた方がいいのかな…でも……
言はチラリと運転するホークスの顔を覗いた。その横顔に少しドキリとしてしまったがすぐに視線を戻し考え事をし直した。
(ううん。これ以上迷惑はかけられない。また今度、伝えよう…)
あの少女の顔はしっかりと覚えているし次に遭遇したら今日のようなことにはならないだろうと高を括り、私は心の中で自己完結をしてその疑問に蓋をした。
そして…その安易な考えがこの先、私を骨の髄まで苦しめることになるとは…想像さえもしなかった。