第19章 エンカウンター
その後、足早に水族館を出て車に乗り込むとホークスは少し待っててと言に一言伝え、車の外で連絡を取り合い始めた。
(私…最低だ…ホークスさんに嘘つかせてる)
車の外で電話をするホークスを横目で見ると助っ席に座ったまま膝に顔を疼くめ、増えていく罪悪感を晴らすようにため息をついた。そして暫くして運転席の扉が開く。
「報告終わったよ。言ちゃんが襲われたことは伝えていない。俺が遭遇したことにしといた」
『ごめんなさい…』
「いいよ謝らないで。これで俺も同罪だ」
優しく笑顔を向けられたホークスのその表情に少し心が軽くなる。
「それと伝えなきゃいけないことがある」
『何ですか?』
「君と同じクラスの…緑谷出久くんだっけ?その子が言ちゃんとほぼ同時刻にヴィラン…死柄木弔に遭遇したらしい」
『み、緑谷くんは大丈夫なんですか!?』
血の気が引く音が聞こえた気がした。息をするのも忘れ、緑谷が死柄木弔と遭遇した。その言葉を耳に入れた瞬間、言は助っ席から身を乗り出してホークスの肩を片手で掴み声を上げた。
「…落ち着いて言ちゃん。緑谷出久は首を掴まれていたようだが幸い大きな怪我は無し。今は警察の取り調べを受けている」
『良かったっ……!!』
緑谷が無事なことを聞かされると乗り出していた身を引いて助っ席の背もたれに体を預け、今にも泣き出しそうな顔をして安堵する。
───緑谷出久の話にあからさまに取り乱し、無事が分かると自分のこと以上に安心を見せる…君だってその緑谷くんと同じ状況に合っていたと言うのに。その緑谷出久と言う男は君にとって一体…
(…いや、今それを聞くのはおかしいだろ)