第19章 エンカウンター
『ホークスさ、ん…!』
ホークスは言の元に駆け寄るとすぐに彼女を抱きしめ自分の胸に寄せた。彼から香るまるで太陽のような匂いが鼻をくすぐり安心感を覚えさせる。
「大丈夫?!怪我は!」
『特に…ないです』
「クソっ…!逃げ足の早いっ…もう見失った!!」
ホークスは優しく言を抱きとめながら、個性の剛翼を使って彼女に傷を負わそうとした犯人を探ったが逃走も手馴れているのだろう、あのホークスでさえこの短時間で見失ってしまった。
「本当に怪我はない?!とりあえず直に警察を呼ぶから」
『ま、待って下さい!!』
ホークスは再度言の身の安全を確認すると手にしていた携帯電話を操作して警察と連絡を取ろうとした。しかし警察に連絡されるのを拒むように言はホークスの手に自分の手を重ね、震える声を喉の奥から絞り出した。
『ごめんなさい…身勝手な事だって言うのは重々承知の上です…でも私が襲われたこと…伝えないで欲しいです……』
「……どうして?」
『これ以上…家族に心配掛けたくないんです…本当にっ、お願いします…!!』
言が真っ先に頭に思い浮かんだのはUSJ事件後の百の姿だった。あんな弱々しく泣き崩れる百を二度と見たくない…家族に心配を掛けたくない…迷惑をかけたくない…言はその一心でホークスに頼み込んだ。そんな言の悲痛な表情をみてホークスは眉を下げる。そして暫しの沈黙を得て彼は重い口を開いた。
「……わかった。一旦駐車場に移動しよう、言ちゃんは俺の車の中で待ってて」