第19章 エンカウンター
『いえ…』
薄暗い水族館内で突然真横に現れた同い年位の少女。ホークスとの関係を興味心身に聞いてきた彼女は黄色い瞳と縦長の瞳孔が特徴で髪型は両サイドにお団子を作り、付け根から髪がぴょこぴょことハネている。服装は丈が短いセーラ服の上にベージュ色のセーターを着用しており、少し大きめのサイズなのか萌え袖になっていた。そんなどこか掴めない少女の登場に内心驚きはしたが平然を保って接する。
「そうなんだ。残念すっごくお似合いなのに」
『そう、ですかね』
「雄英高校の言ちゃんだよね」
『!…知ってるんだ』
「そりゃあ、有名人だもん。体育祭の活躍でしょ、後は保須市の事件……そしてステ様のお気に入りだとか…」
『ステ様…?』
疑問を口にしながら少女に視線を向けると彼女はなんとも言えない笑顔を張りつけ指を折り曲げながら話をしており、何故だかその姿にゾッとしてしまった。
「言ちゃんは少し警戒心が薄すぎだと思います」
そして視線が重なり合うと彼女は意味ありげな言葉を言に放ち、徐に制服のポケットに手を入れた。
「そう…例えば、今。目の前にいる出会ったばかりの女の子に刺されちゃうとか」
制服のポケットから出てきたのは小さなナイフ。同じ歳位の女の子が手にするのには丁度良いサイズで、ナイフを取り出すその慣れた手つきから常習犯であることが考察できた。
(っ刺される…!!)
間一髪のところでナイフを避けるが、避けた拍子に体のバランスを崩しその場に転倒する。そして同時に手にしていたカバンの中身も転倒の衝撃で床にぶちまけられる。すると本来であれば自分のカバンに入っているはずのないものがカバンから飛び出し、床を2回・3回とバウンドした。そのとあるものとは防犯ブザーで、落下の衝撃で防犯ブザーが起動したのか大音量のブザー音が水族館内に鳴り響いた。
(百ちゃんの……)
いつの間に入れていてたのだろうか。昨日教室で手渡されその場で直ぐに返却したはずの防犯ブザーはカバンの中に紛れ込んでいたようで、言はきっと百が出掛ける前にコッソリとカバンに忍び込ませたのだろうと呆れながらもその行動に感謝した。そして離れた場所から心配の色を乗せた声が聞こえてくる。
「言ちゃんっ…!!!」