第19章 エンカウンター
「次のエリア行こうか」
『え、ホークスさん手…!』
「今更?言ちゃん駐車場からここまでずっと俺の手握ってたけど」
そう言ってニヤニヤと笑みを浮かべながらホークスは悪戯に握った手を言に見せつけた。当の本人はそんな訳はないと自分の記憶を振り返ったが確かに駐車場から自分で手を引いてこのエリアまで手を繋いでいた記憶があり、その記憶が蘇ると同時に羞恥に頬を染めた。そしてホークスの大人の余裕に抗おうとするのを諦めたのか繋がれた手に熱を乗せながらも彼の隣を歩き、次のエリアへと向かった。
案内板やパンフレットの地図を頼りに次のエリアに到着すると大水槽のエリアとは雰囲気がガラリと変わり、クラゲが幻想的にライトアップされ展示されているエリアとなっていた。
『わぁ…綺麗』
暗闇の中でライトアップされたクラゲたちはまるで宇宙の星々のようで、宇宙の中で散歩をしている気分を味わえた。
『ホークスさん見て!アトランティックシーネットルですよ。流星みたい…』
漆黒の中に輝くアトランティックシーネットルはまるで銀河に瞬く流星で、その美しさに言は声を漏らして見惚れた。しかしホークスの視線の先はクラゲではなく言だった。言は彼に向けて私じゃなくてクラゲを見てくださいと注意しようとしたのだが、どうしてだか彼の真剣な眼差しに吸い込まれ、声を失い視線を外せなくなる。
(あれ、このままだと……)
2人の距離があと少しで重なり合う時、タイミングが良いのか悪いのかホークスの携帯に着信がかかる。
「……ごめんね。ちょっと出てくる」
ホークスは文句ありげな表情を浮かべながらも渋々と携帯の画面を開く。しかし携帯の画面を目にした途端、顔色を変えて言に一言謝罪をすると電話をしに行ってしまった。
『緊急の用事かな…』
電話しに行ったホークスの心配をしながらも先程の出来事を思い出して熱を帯びた体を冷まそうと頬を手で扇ぐ。すると横から女の子の声が聞こえてきた。
「さっきの人はアナタの彼氏さんですか?」