第19章 エンカウンター
「あ、ごめん!今離れるか、ら……え?!」
ホークスは言との現在の距離を理解すると即座に水槽につけていた手を退けて離れようとしたのだが、自分の瞳に映る言の姿にすっかり気を取られてしまい退かすことを忘れそのまま固まってしまう。
今、自分の目の前にいる言は薄暗い水族館の中でもわかる程に真っ赤になっており、あまりのその照れように自分も釣られて顔を赤らめた。そして今まで素っ気ない態度を取っていた言が何故そのような態度を取ったのかを自白した。
『ごめんなさい…水族館に着いた時にホークスさんのお姿を見てしまったら本当に今日はデートなのだと実感が湧いてしまって…何故だかそこからホークスさんの顔が見れなくなってしまって…』
「要は俺をずっと意識して素っ気ない態度になってしまっていたってこと…?」
ホークスの圧倒的理解力の速さと完璧な言い当てに言は照れながら首を縦に振った。また、恥ずかしさから強く握りしめたスカートは皺になっている。そして口を開かないホークスを薄目で見て呆れられてしまっただろうか、はしたない女性だと思われてしまっただろうかと考えていると肩に重みがかかる。
「はぁ〜…良かった…嫌われたんじゃなくて」
重みの正体はホークスで、彼は言の肩に頭を預け安堵していた。
『近いです…!』
「ん?わざと」
肩にもたれ掛かるホークスは悪戯に微笑んで今にも顔と顔がくっつきそうな距離間で視線を合わせた。言に嫌われているのではなく意識されていると分かったホークスは遠慮することなく言に責めいる。
『ホークスさんのいじわる…』
「すいませんでした」
言の「いじわる」と言ったワードに心臓を鷲掴まれたホークスは自分が間違った道に入り込んでしまいそうになったのをすんでのところで堪え、自分の気の迷いを正すように自分の頬を拳で殴った。
『え?!何やってるんですか!』
「ちょっと俺の心の中の深海魚が…」
『何言ってるんですか』