第19章 エンカウンター
チケット売り場でチケットを購入し水族館内に入館する。そして中に入って直ぐ言たちを出迎えたのはアクアゲート。トンネル状になった水槽の中を歩けるようになっており様々な方向から魚たちを観察できる素敵なエリアだ。
「まるで海の中にいるみたいだね」
『そ、そうですね』
アクアゲートを進みながら未だよそよそしい態度を取る言にホークスは心の中で戸惑いを見せた。
(え、何だろう。俺嫌われるような事したかな…でも手は握られたままだし…これどういう拷問??)
そして熱帯魚のエリアや北極などの寒い海で暮らす生物のエリアを通り、次に来たのは大水槽が設置されたエリア。大水槽の中にはジンベエザメやサメなど回遊魚たちが展示されていた。
(初めての水族館でもっと見たいことや知りたいことがあるのにホークスさんを意識してしまって全然頭に入ってこない…)
言は大水槽に両手をつき、魚たちを眺めるふりして自分の乱れた心を落ち着かせようとしていた。そして次第に落ち着きを取り戻し、やっとホークスの顔が見れるかもしれないと思った矢先、声をかけられる。
「何観察してたの?」
自分を覆うように後ろから現れたのはホークスで振り返ると彼の体がすぐ目の前にあり、所謂壁ドンをされているような体勢になっていた。
『いっ、イトマキエイを見てました…』
「イトマキエイ…あぁ、あれか!」
あまりのホークスとの距離の近さに思わず悲鳴を上げてしまいそうになったが何とかその悲鳴を飲み込んで体の向きを水槽に戻し話を続ける。ほんの僅かではあるが会話を成立させ、まだ顔を見ることは出来ないがこのままの流れだったらいつも通りに接していけると思っていたその時、ホークスは少し悲しげな声色で口を開いた。
「…言ちゃんさっきから俺の事見てくれないよね?俺なんかしちゃったかな?何かしてたなら謝りたい」
『違います!ホークスさんは何も悪くなくて…私が…私が』
思わずホークスの言葉に振り返る。しかし今ホークスが大水槽のガラスと自分を挟むように立っていたのをすっかり忘れていたため、これで完全に壁ドンをされている状態になった。そんな状況に言はホークスの方を向いたまま言葉を失い、固まってしまった。