第19章 エンカウンター
30分程車で移動して最近若者の間で話題になっている水族館に到着する。そしてホークスが足早に運転席を降りると紳士的に助っ席のドアを開けて言に手を差し伸べ、彼女をエスコートした。ホークスの手を取って車から降り、改めて彼の姿を確認した時言は初めて見るホークスのプライベートの姿に戸惑いを感じた。移動中は気にも止めなかったが対面してみるとヒーローの時とは違うオシャレな私服。身バレ防止の為にかけているサングラスはより男らしさを感じさせ、今日は本当にデートなのだと言う実感を何故だか湧かせた。
「言ちゃん大丈夫?ぼーっとしてたけど車酔いした?」
『い、いえ…大丈夫です。それより早くチケットを買いに行きましょう…!』
言はホークスの姿を真っ直ぐ見つめることが出来ずそっぽ向くような形で返事を返してしまった。
(どうしよう…今の返事、最悪だ。でも今ホークスさんの姿を見ることが出来ない…!どうしよう…!)
後悔と焦燥に心を乱しながら足早にチケット売り場まで歩く言。しかし言は大事なことを忘れている。言は助っ席から降りた時ホークスの手を握った。そしてその手は未だ握ったままである。言は頭の中でパニックになりながら歩いているせいかホークスの手を握っていることをすっかり忘れ歩き続けた。
「言ちゃん…!嬉しいけど手っ!手!……やばい聞こえてない」
言に手を引かれながら歩くホークスは満更でもなさそうで、僥倖の2文字を頭に浮かべながら言が自身の手を握っていることを伝えるのを止めた。