第19章 エンカウンター
(流石にこれは気持ち悪いか……)
言が家の門から出てくる10分程前、八百万家の近くにあるコンビニで車を停め、その車の中でハンドルにもたれかかりながら頭の中でぶつくさと考え事をするホークスがいた。
(駅前集合と言ちゃんに伝えたがあんな可愛い子が駅前に1人で行くなんて危なすぎる…!絶対にナンパされるし、もしかしたら誘拐も…!)
言のことになると途端に過保護になり少し頭のIQが下がるホークス。ヒーロー活動をしている普段のカリスマ性溢れる彼からは想像がつかなく、車の中で1人の女の子に一喜一憂するその姿は信じられない光景だ。
(それに…早く言ちゃんに会いたい…)
最近は地元の事件から公安の事件。そしてヒーロー殺しやヴィラン連合関連の仕事であまりにも忙しかった。そんな忙しい仕事の中で最近出来た微かな楽しみは職場体験以降続けられていた言とのメールのやり取りだった。言から送られたメールを読むだけで喜怒哀楽を浮かべる彼女の姿が想像でき、辛い仕事の時でも元気を貰えた。そしてその度に、早く彼女に会いたいと思うのだ。あの透き通った清流のような耳心地の良い声を聞きたい。蕾がほころぶように笑う顔が見たい。ふとすると彼女の事ばかり考えており、言に対する想いは留まることを知らなかった。
(とりあえずそろそろ向かいますか…)
そして心を決めて車を動かし言の家の前に着くと、脈打つ心臓を落ち着かせるために1度息を整えた。
(ヤバい。彼女の家があの八百万家であるとは知っていたがここまで家がデカいとは…)
ホークスは今自分が通ってきた道を見てずっと塀が続くなと思っていたがまさかその塀が言の家を囲っている塀だとは思ってもおらず、心臓を縮ませた。そして暫くしてサイドミラー越しに門から姿を表した言を見つける。
(あ゛〜…今日も可愛い…と言うか久しぶりに見る言ちゃんが大天使過ぎて今日1日俺の心臓持つかな…)
ここまで来るともはやアイドルを推すオタクの心境のようだ。そしてホークスは両手で頬を1度強く叩き気持ちを入れ替え、言が車の横を通るタイミングを狙って車の窓を開けた。
「言ちゃんおはよう」