第19章 エンカウンター
雲ひとつない晴天の下。いつもとは少し違う気合いの入った私服を身にまとい、外に出るために大きな家の門を開けてもらう。そして門を潜り大きな大きな家の敷地を囲う塀に沿って歩くと珍しく家の前には赤色の高級車が止まっていた。少し気にはなったがそのまま車の横を通り過ぎようとした時、車の窓が開かれる。
「言ちゃんおはよう」
横を通った瞬間に窓を開かれたので一瞬身構えたが、車に乗っていた人物を確認するとその警戒は直ぐに解かれ、警戒といった感情は次に困惑へと変わった。家の前に止まっていた高級車の窓から顔を出したのはプロヒーローのホークスで、彼はとてもいい笑顔で言に向けて挨拶をした。
『おはようございます…』
言はホークスの登場に目を丸め、か細く挨拶を返した。期末試験翌日の今日は学校が休みで丁度予定してあったデートの日。そしてそのデートのお相手はこの高級車に乗っているホークスなのだが、それなら何故言が驚きを見せたのか。それは今目の前にいるニコニコと笑顔を貼り付けた男の予想外の行動のせいである。本来であればデートの待ち合わせは駅前のはずだったのが今ホークスが目の前にいることでその予定が全く違うものになったからだ。
『駅前で待ち合わせの予定では?』
「言ちゃんに早く会いたくて来ちゃった」
そうお茶目な事を口にしたホークスは手招きで言に助っ席に座るよう促した。
『今日はどこに行くんですか?』
ホークスに誘われた通り車に乗り込み、言は座り心地が良い車のシートに腰をかけて、シートベルトをしっかりと締めながらホークスにそう問う。
「水族館なんてどうかな?と思ってて」
『いいですね…!私水族館行ったことないので楽しみです!』
「へぇそうなんだ。なら良かった!」