第18章 期末演習試験
試験が終わり、言はセメントスを覆っていた氷を消去し終え脱出ゲートにへと向かった。ゲートを潜るとすぐ目の前には切島が待っていて、言の姿を視界に入れると笑顔で手を振り駆け寄ってくる。
「おう!お疲れ、言。セメントス先生を捕らえたらしいな!やっぱすげぇな言は」
『鋭児郎もちゃんとゴールゲート突破できたじゃん』
「それは言のお陰で……わりぃ!俺何も出来なくて…」
互いに労いの言葉を掛け合うと、思い詰めた面持ちで頭を下げた切島。そんな切島を見て言は首を横に振った。
『ううん、私もごめんなさい。もっと2人に自分の意見を伝えるべきだった』
「言が謝ることなんてねぇだろ!俺がもっと、もっと…!!」
───これが本当のヴィランとの戦いだったら言は死んでいたかもしれねぇ。なのに俺は!何も考えずに敵に突っ込んで個性も使えなくなって!!挙句の果て好きな女に守られるザマだ…
俺は”あの時”から何も変わっちゃいねぇ…!情けねー、弱いままの自分だ…!!
切島は自身の手を強く握り締めて、己の無力さを悔いるように歯を食いしばった。
『私達まだまだだね。もっと強くなろう』
そう言って言は切島に向けて拳を突き出した。拳を突き出した彼女の瞳はとても真っ直ぐで…切島もそんな彼女の瞳と目を合わせると前に進まなくてはいけないと感じさせられ、後悔を飲み込みながら拳を合わせた。
「おう!!!」
『…っい』
切島と拳を合わせた瞬間、脳内にビリリと電流が走る。言は頭を押さえてその痛みに声を漏らした。
「おい言?!大丈夫か!」
『何だか昔にもこんな事があったような……』
「!!」
『…ごめんなさい、変なこと言ったね。多分個性の使い過ぎで疲れちゃったのかな?それよりも砂糖くんの様子見に行こっか』
「おう…」
言の小さな一言に切島は驚きを隠せず、眉間に皺を寄せた。そして彼女は何事も無かったように話を戻し、同じチームである砂糖の体調を確認するべく保健室にへと足を向ける。切島は言に聞きたいことが山ほどあったが何故だか今は聞く気になれず、その思いを封じ込めるように静かに瞼を閉じて返事をした。