第18章 期末演習試験
どこからともなく聞こえてきた相澤の声。彼は電線に捕縛武器を巻き付けて轟と百の上から姿を現した。
「ちっ」
轟は自分たちの目の前に現れた相澤に舌打ちを零しながら攻撃を浴びせようとする。が、重りが装着されてあっても数多の戦いを味わってきた現役のプロヒーローにその攻撃が当たる訳もなく軽々と避けられ、空中にいた相澤は猫のようにしなやかな動きで地に足を付けた。
「この場合はまず回避優先すべきだ。先手取られたんだから」
「八百万行け!」
相澤と鉢合わせたら轟が引きつけ時間を稼ぎ、その間に百が脱出ゲートにへと走るといった試験開始前から組まれたこの策。相澤の奇襲から始まった予定通りとはいかない戦闘でもその策を変更はしないようで、困惑の表情を浮かべる百に指示を出して脱出ゲートにへと走らせた。
「あ、そういうアレか。なら…好都合だ」
「痛っ…!!?」
轟は相澤の捕縛武器に体の自由を奪われ、力ずくで宙にへと引き上げられる。
「どのみち攻撃的なおまえから捕まえるつもりだった」
「捕まえた…つもりですか。こんな拘束燃やすか氷結かですぐ…」
「どっちでもいいが落下先に気をつけろよ」
そう言って轟を捕らえている布を電柱に巻き付け終わった相澤は轟の落下点に撒菱をばら撒く。
「マキビシ…忍者かよ。嫌らしい対策してくるな…」
「そりゃヒーロー殺しの時とは違うからな。ヒーローの個性も人数も知っている迎撃態勢バッチリの敵だ」
相澤は目にかけていたゴーグルをズラして上を向き、目薬を注しながら話を進める。
「ずいぶんと負担の偏った策じゃないか。女の子を慮るのは立派だがもう少し話し合っても良かったんじゃないか?」
目薬を注し終えた相澤はそう言い捨て、百を追うために足早に駆けていった。そしてその場に残された轟は宙に浮きながら相澤の言葉に眉を寄せた。
(話し……)